自己肯定感を何で得ているか?
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1976年生まれ、群馬県在住。
ヒプノセラピーの先進国、アメリカ合衆国の中でも長い歴史を誇る、ヒプノセラピーのナンバーワン・プロ団体「NGH」。ナンバーツーの規模を誇る「ABH」の両団体より公式認定されたスクールにて、ベーシック・トレーニング、プロフェッショナル・トレーニング、トレーナー・トレーニングの全コースを修了。
ヒプノセラピスト(催眠療法士)となる。
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自己肯定感を与えてくれるツールとその割合
人は自己肯定感を与えてくれる独自のツールをいろいろ持っています。
よく使われているツールは、他者との関係性ですが、
その他者の行動から得ている自己肯定感が、その人の中であまりにも大きな割合を占めていることが時としてあります。
そのような場合、その他者との関係性は、かなり重要で神経質なものになります。
自己肯定感を得るためのツールやその割合が自分の中でどうなっているのか、
確認してみるのも面白いかもしれません。
エピソード
3人のお子さんを持つ女性Lさんは、勤務形態が在宅勤務に変わり、子供達と長時間、密接に関わるようになりました。
その生活の中で、A君とだけ関係がこじれていきました。
他の子供たちとは上手くいっているのに、今はAくんについて、自分のことをイラつかせるためだけに存在しているとしか思えない時もありました。
A君と喧嘩になると、大人気ない自分の感情が剥き出しになり、喧嘩後は自己嫌悪の繰り返しでした。
自己嫌悪の後、A君を理解しようと心に誓うのですが、またA君と喧嘩になると、
Lさんの頭の中には「絶対に自分が正しい」という思いが巡り、A君を追い詰め、
Lさんの持論をぶつけ、Lさん自身も疲れ果てていました。
A君に持論をぶつけている間は、決まって頭がキーンと締め付けられるような感覚になるとのことでした。
他の子供たちの意見や決断は尊重できるのに、A君に関しては全てが危なっかしく感じ、
自分がA君の変わりに考えてあげないといけないと思ってしまい、
それがA君の意見や決断を聞いても、否定的な態度しか取れない状況を招いていました。
セッションでLさんに、A君のどんな行動について特にイラつくのか聞いていくと、A君の無防備な性格について、特に苛立ちを感じていました。
Lさんは「Aは失敗することを前提として挑戦するところがあって、そこは強さでもあるけれど、それが後々、家族に迷惑をかけるんじゃないか」と苛立ちと不安を持っていました。
LさんがA君の性格について話していく中で、苛立ちや不安、心配といった言葉の中に、
Lさんはポツリと「Aのそういう性格が羨ましい時もある」と言いました。
Lさんに「LさんもA君の羨ましいと思う行動をご自分でとってみたことはありますか?」と尋ねると、
Lさんはしばらく沈黙した後、「ないですね。・・・しちゃいけないというか。・・・・・・そうしたら手遅れになってしまうから」と答えました。
Lさんに「いつからそう感じるようになりましたか?」と聞くと、
Lさんは「・・・。とても前・・・です。」と答えました。
そこで、Lさんが言う『とても前』に誘導すると、ある場面がLさんの中に浮かんできました。
その場面で、Lさんは赤い土の大地と、家畜の群れの中に立っていました。
Lさんは深い催眠状態になり、自分はこの土地の部族を率いていると言いました。
Lさんは現在のアフリカ大陸のある土地で、その近辺ではかなり大所帯の部族の長でした。
その当時、ヨーロッパ人がこの土地に接触しはじめ、ヨーロッパ人と交易を始める近隣の部族も現れてきました。
ヨーロッパ人は、この土地での礼儀作法を学び、礼儀正しく、いつも友好的な態度を示していました。
Lさんの部族の中でも、ヨーロッパ人が持っている優秀な道具や繊細な食べ物に憧れ、交易をしたがる者たちが増えていきました。
しかしLさんは、これほど優れた道具を作れるヨーロッパ人は、自分たちなど簡単に支配できるだろうと脅威を感じて、交易はしないことに決めました。
この決定が、ヨーロッパ人のような生活を求める若い世代から強い反発を受け、部族分断を引き起こしました。
若い世代の言い分は、「交易でもしヨーロッパ人に騙されたら戦えばいい。この土地での戦いなら、土地勘のある自分たちが確実に有利で勝てる」というものでした。
しかしLさんからみて、道具の技術から、ヨーロッパ人は優れた武器を持っていると感じ、騙されたと気づいた時には、もう逃げられず手遅れだと思いました。
最終的にLさんは、家族共々、交易を求める若い世代たちにリンチされ命を落とすことになりました。
この部族の長の人生が終わった後、Lさんはとても激怒していました。
Lさんは「こんな仕打ちは納得がいかない。愛情を持って、部族の将来を必死で考えて尽くしてきたのに、こんな仕打ちが許されるはずがない!」と言いました。
そして「自分の考えや愛情が正しかったことを証明したい。でないと私そのものが壊れてしまう」とも言いました。
Lさんの激昂はなかなか収まらないため、部族の長の意識からディソシエイト(感情から分離させた状態)させ、
Lさん自身の意識に戻した後、リラクゼーションをとることになりました。
リラクゼーションで冷静な視点を取り戻したLさんですが、部族の長に関する質問をすると、
こちらの誘導なしに、また意識が部族の長にアソシエイト(感情と一体化した状態)してしまい、その後は部族の長として質問に答えていきました。
部族の長のLさんに「あなたの考えや愛情が正しいと証明するには、どういうことが起きたら満足ですか?」と尋ねると、
Lさんは「あの若者たちが、私の考えを認め、従ってくれれば満足。」と答えました。
Lさんに、若者たちがそう行動してくれたらどう感じるか尋ねると、
Lさんは「自分の存在が許されている感覚。自分はやはり間違っていなかったと世界に肯定されている。ほっとする。」と答えました。
このあたりから部族の長にアソシエイトしたLさんの口調も穏やかになり、今度はこちらの誘導でしっかりと意識がLさん自身に戻っていきました。
Lさんに部族の長の人生と現在の人生との類似点を挙げてもらうと、ヨーロッパ人と交易したがった若い世代とA君の性格が似ていると答えました。
Lさんに「もしA君があなたに従順になったら、どう感じますか?」と尋ねると、
「満足。私の愛情がAに伝わっていると感じます。私の愛情が間違っていなかったと安心します。」と答えました。
そこでLさんに「A君を通して自己肯定感を得ている部分は、今のあなたの中でどれくらいの割合を占めていいますか?」と尋ねると、Lさんは「今は90%以上」と答えました。
ここからは、ガイドやエンプティチェアを使って、Lさんの感情を整理していくと、
部族の長の意識は、あの時の若者たちの気持ちを理解するにつれて、あのリンチは起こるべくして起こったと納得しました。
そしてエンプティチェアでA君の意識にLさんをアソシエイトさせると、
A君になったLさんは涙ぐみながら、「苦しい。お母さんが自分のことをわかってくれない。生きてることを無視されている感じ。もう諦めている。」と話しました。
エンプティチェアを終了し、意識をA君からLさん自身に戻すと、Lさんは先ほどの自分の言葉に涙を流しました。
そのLさんに、A君にどんな言葉をかけたいか尋ねると、Lさんは「ごめんね。お母さんも本当はたくさんたくさんAに優しくしたかったよ」といいました。
そしてLさんに、A君を通して自己肯定感を得る割合は、どのくらいにしたらお互いにとって適切か尋ねると、
Lさんは「30%くらい。お互いの人生を尊重しなければいけないです。」と答えました。
Lさんに、いつ頃30%に出来そうか聞くと、Lさんは「多分すぐ?、自然とできそうです」と答えました。
余談
Lさんに「A君とは部族の長のときに、出会っていそうですか?」と尋ねると、
「会っていないようです。うーん、でも中国で兄弟だったって、イメージが今浮かびました」と答えました。
新しい世界
オンラインセッション中、ご主人がお子さん達を外に連れ出してくれましたが、
家族はLさんと約束した時間よりも早く帰宅しました。
家族の帰宅時間は、ちょうど催眠状態を解いたふりかえりの時間と重なったのですが、
Lさんは慌てる様子もなく落ち着いていました。
そのことについてLさんはこんなことを言いました。
「家族が約束した時間を守ってくれるかとても心配でした。
セッションが邪魔されたらどうしようとかいろいろ考えていたけれど、
実際そうなったのに、邪魔されたっておもわないです。」
そこでLさんに、「もし早く帰宅したいと言い出したのがA君だったら、どう感じますか?」と質問すると、
「ありえますね笑。Aは早く帰りたかったんだなって。帰ってきてくれて嬉しいです」と答えました。
Lさんに「またA君をコントロールしたい衝動が湧いてきたらどう対応しますか?」と尋ねると、
「これ(A君をコントロールすること)をしてどうなるの?って自分に聞きます。自分にとってどんな意味があるのか考えます」と答えました。
A君にイラついていたLさんですが、新しい視点を手に入れたのかもしれません。
※新型コロナウィルス感染防止の観点から、お客様のご健康と安全確保のため、セッションは、オンラインツールを使用したオンラインセッションとなっております。
対面式ご希望のお客様には、しばらくの間ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。