あなたは潜在意識の遺跡発掘者?
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1976年生まれ、群馬県在住。
ヒプノセラピーの先進国、アメリカ合衆国の中でも長い歴史を誇る、ヒプノセラピーのナンバーワン・プロ団体「NGH」。ナンバーツーの規模を誇る「ABH」の両団体より公式認定されたスクールにて、ベーシック・トレーニング、プロフェッショナル・トレーニング、トレーナー・トレーニングの全コースを修了。
ヒプノセラピスト(催眠療法士)となる。
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あなたは遺跡発掘者
潜在意識の中にある、記憶や自分で採用したビリーフを遺跡に例えると、
あなたはあなたの内面を調査する遺跡発掘者にあたるかもしれません。
そして遺跡を発掘したら、発掘した遺跡と現在との因果関係を紐解き、
自分の心の滋養に変化させていくこともできます。
エピソード
精神医学に携わっているPさんは、講座の受講生たちとの間にトラブルが発生しました。
このトラブル発生から、内面のメンテナンスに訪れました。
Pさんは、このグループの受講生たちとのトラブルは、あらかた予想していました。
Pさんにとって、このトラブルは自分の内面の重石をそろそろ軽くしたほうがいいという、
日常の変化がもたらすメッセージだと感じたそうです。
Pさんは自分の内面に、どんな重石がいくつあるか把握していて、それを時期をみて少しずつ紐解いていくのを楽しみにしています。
今回は、自分と受講生たちとの関係に焦点を当てたいと言いました。
Pさんのセッションのリクエストは、
◯寂しさの感情にまつわるいつものインナーチャイルドが出てきたら、今回は帰ってもらう。セッションテーマの焦点(受講生たちとのトラブル)をぼやかしたくない。
◯潜在意識の中の登場人物で、エンプティチェアを行う人物はPさんの希望を優先する。
◯自分が理屈を並べ出したら、このセッションを始める動機を思い出させて、セッションから自分が逃げ出さないように粘り強く誘導して欲しい。
上記のPさんのリクエストに沿って、セッションを進めていくと、Pさんが確認したかったことが見えてきました。
それは受講生たちとのトラブルを予想していたのに、トラブルを回避する手段をとっていたのか?ということでした。
潜在意識を見ていくと、トラブル発生を回避できた場面がPさんの記憶の中から3つ浮かび上がってきました。
Pさんはその3つの場面で、トラブルを回避する行動をとらず、逆にトラブルを引き寄せる行動をとっていました。
Pさんはこのことについて、「自分の弱さが巧妙に暗躍していた」と笑いました。
Pさんがいう『自分の弱さ』とは、Pさんが把握している重石の一つですが、
Pさんの中で、近年はだいぶ自分への影響は少なくなってきたと感じていたものでした。
この重石についてPさんは、「結構、根深かったな。これ(この弱さ)も根っこは父親かもしれないですね。」と言いました。
Pさんに「この弱さとお父さんとの関係を見ていきますか?」と尋ねると、
「いや今回は(父親のことは)ここまでで。受講生に焦点を当ててください」と言いました。
そこで、受講生たちとの場面をいくつか見ていくと、Pさんが眉間にシワを寄せ始め、
「うーん、嫌だな。ダメだな。」、「そうか、なるほどね」となどとつぶやき始めました。
Pさんは誘導する場面ごとに自分を分析して、自分の内面を整理していました。
Pさんが指定した人物とのエンプティチェアや、Pさんが希望する象徴的な場面への誘導を終えて、
Pさんに先程のトラブルが回避できた3つの場面にまた戻ってもらいました。
戻ったそれぞれの場面で、改めて行動を選択してもらうと、Pさんはトラブルを回避する行動をとても自然に取りました。
この自分の行動についてPさんは「なんだ、こんな簡単なことだった。自分の弱さを警戒するあまり、逆にミイラ取りがミイラになってしまった」と笑いました。
Pさんにトラブルを回避できた自分として、今後の日常生活に必要なものと不要になったものを教えてもらうと、
Pさんは不要になったものとして「自分の弱さに誘惑されないように注意していた緊張感」をあげました。
Pさんにその緊張感の元になっているPさん自身の弱さを色のついたボールに例えてもらうと、Pさんは自分の弱さを薄い灰色のボールに変えました。
そのボールについてPさんは「こうやって(ボールを)見ると、とても弱々しくて、消えてしまいそうな儚いボールでした」と言いました。
Pさんが恐れていたものの正体は、Pさんが考えていたものよりも弱く儚かったようです。
Pさん自身、心の奥ではそのことに既に気づいていて、顕在意識でもそろそろ気づく時期だと自分にアラームを鳴らしたのかもしれません。
余談
セッションで現れたインナーチャイルドはこれまでとは違って攻撃的ではなく、
素直に寂しさを表現しているように感じました。
Pさんの中で何か変化があったのかもしれません。
新しい視点
Pさんは振り返りの時間の中で、自分の弱さを表したボールについてこんなことを話しました。
Pさんは「(自分の弱さをボールに例える)誘導をされた時、もっと大きくて目を背けたくなるような、汚い色をしたボールが現れるんじゃないかと一瞬怖かったのですが、ああいうボールが現れるとは意外でした。」と笑いました。
Pさんに「あのボールの大きさや色を決めているのは誰だと感じますか?」と尋ねると、
Pさんは「自分ですね。自分でコントロールしています。」と答えました。
Pさんは自分の弱さに対して新しい視点を手に入れたのかもしれません。
<遺跡発掘者になるタイミング>
Pさんは自分の内面にある重石に重要度をそれぞれ付け、重石ごとに変化させる順番やその方法、時期にこだわります。
潜在意識の中にある遺跡(記憶、ビリーフ)を発掘する時に、Pさんが一番こだわっているのは発掘作業のタイミングです。
発掘作業が、日常生活に変化をもたらすと感じている場合は、自分の内面のトレジャーハンターになりますが、
発掘作業が苦痛に感じるのなら、発掘のタイミングが適していない可能性があります。
以前Pさんにお父さんとの関係性をイメージしてもらった時、お父さんは『Pさんの皮膚にしっかりと食い込んだ爪』として現れました。
その時Pさんは「この食い込んだ爪をどうするのか、どう付き合っていくのか、慎重に考えます。
処置の仕方では傷がもっとひどくなるかもしれないですし、このまま温存したほうがいい場合もあります。
付き合い方によっては(爪が)皮膚に食い込んだままでもやっていけますから」と答えました。
Pさんの言うように、そっとそのままにしておいたほうがいい重石もあります。
あなたにとって適した発掘作業のタイミングは、あなたが日常生活に変化をもたらす可能性を感じた時なのかもしれません。